開催にあたって
今月の弊所・情報法制研究所(JILIS)の月例のコロキウム(談話会)。大変ご好評賜り恐縮です。今回は、高木浩光、板倉陽一郎、鈴木正朝各先生と私・山本一郎とで「プライバシーフリークの逆襲・24年秋の号」として個人情報保護法の改正と、ネットで起きた諸事件について情報法の観点から解説を加えてモノの考え方を明らかにしていく回を開催します。
昨今の情勢では、人事が大幅に刷新されて正常化した個人情報保護委員会の皆さんと、自由な個人情報の流通を目指す産業界団体・財界ロビーの皆さんとの間でのせめぎ合い的な局面が多くみられるように感じられます。
クレジットカードの国際ブランドだけでなく、ビッグテックによって経営されているプラットフォーム事業者と、国民の持つ固有の権利である「表現の自由」およびデジタル立憲主義のアプローチについて、政府・法制度と技術論の観点から現状と将来のあるべき姿について迫ります。
当プライバシーフリーク・カフェの各先生方も、個人情報の流通についてはおおいに促進し利活用したい一方、それにまつわるルールが雑然としており、また学校などの未成年者に関する教育データも患者さんの治療を目指すはずの医療データも割と一緒くたに。また匿名加工なんだか散在情報なんだかワードも取っ散らかったままパブコメやって議論が錯綜ということは何としても避けたく、この辺の整理も含めて個情法対応に悩む大手企業、特にネット対応の法務部の皆さんのかゆいところに手の届くテーマに踏み込みたいと思います。
今回、一連の個情法テーマでは特に、サービス一般に浸透している「本人同意原則をどう見直していくか」という問題が重視をされていくように感じております。というのも、過渡的な概念である本人同意原則を前に立てて制度設計をしても、頂戴したユーザーの同意があれば利用データを元にいかなる分析をして決定までもっていっても良いというわけには当然いきません。しかしながら、実際にはデータ分析の結果、その判断で個人が不利を蒙る不利益があったとしてもそれを適正に糺す方法が乏しく、例えば日本人が日本で使うサービスで得られた情報が海外の事業者によって分析され不当な決定に用いられても日本国内で抗う術がありません。
個人情報の適正な利用と流通の促進は日本にとって重要な事項ですので、関連法規と共に個人情報保護法の改正ではこれらの本人同意原則の適用範囲や解釈が大きな論点となっています。本コロキウムでは、この問題を中心に据え、個人情報の適正な取り扱いと、データ活用のバランスをいかに取るべきかについて、各分野の専門家が議論を交わします。
また、近年話題となったネット関連事件を題材に、個人情報保護の観点から法的な解説を加え、企業や個人がとるべき対策についても言及する予定です。データ活用を推進しつつ、個人の権利利益をいかに守っていくか。本コロキウムが、この難題に一石を投じる機会となれば幸いです。
日時
2024年10月22日(火)18:30〜20:30
(リアル・オンライン同時開催、アーカイブあり)
[会場]ビジョンセンター赤坂(地図)
東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル 8F
[アクセス]東京メトロ「永田町」駅3番出口すぐ
東京メトロ「赤坂見附」駅徒歩5分
イベント概要
- ●登壇者
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鈴木正朝(情報法制研究所理事長、新潟大学法学部教授)
高木浩光(情報法制研究所副理事長、国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員)
山本一郎(情報法制研究所上席研究員)
板倉陽一郎(情報法制研究所理事、弁護士) - ●主なテーマ
- ・個人情報保護法改正における現在の課題について
- ・近年のネット関連事件について解説
- ・本人同意原則の適用範囲や解釈
- ・個人情報の適正な取り扱いとデータ活用のバランス
- ・今後、企業や個人がとるべき対策とは
*内容は予告なく変更になる可能性がございます。
登壇者プロフィール
鈴木正朝
1962年岩手生まれ。一般財団法人情報法制研究所(JILIS)理事長。新潟大学教授(情報法)。一般社団法人次世代基盤政策研究所(NFI)研究主監・理事。個人情報保護法改正、JISQ15001起草、プライバシーマーク制度創設、経産省個人情報保護ガイドライン、匿名加工・仮名加工情報、マイナンバー制度、個情法制2000個問題解消(公民一元化)等に関与する。
高木浩光
1967年岐阜生まれ。情報法制研究所副理事長。国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員サイバーフィジカルセキュリティー研究センター主任研究員。共著書に『ニッポンの個人情報』『GPS捜査とプライバシー保護』など。
山本一郎
1973年東京生まれ。情報法制研究所上席研究員。東京大学政策ビジョン研究センター(現未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て情報法制研究所・事務局次長。著書に『読書で賢く生きる。』、共著に『ニッポンの個人情報』などがある。
板倉陽一郎
1978年千葉生まれ。弁護士(ひかり総合法律事務所)。理化学研究所AIP客員主管研究員。国立情報学研究所客員教授。2020年5月より大阪大学ELSIセンター招へい教授。情報法制研究所参与を経て2021年4月より理事。