平素は一般財団法人情報法制研究所(JILIS)の活動に深いご理解を賜りまして、ありがとうございます。
JILISに先駆けて、新潟大学教授の鈴木正朝と、皆さんご存じ高木浩光、そして世界的なポケモンブリーダーとして知られるIT弁護士の板倉陽一郎とジェントルマン山本一郎の4名でデジタル社会の個人情報保護法制について「プライバシーフリーク・カフェ(PFC)」として足掛け10年、実に粗暴な言論活動を展開して参りました。
所詮在野の蟷螂の斧、情報法というニッチな分野ならば、いろいろと言いたい放題も許されよう、なにがしか世の中の役にも立つのではないかという漠然とした期待感も込みで、爆速で進展する技術革新の中、個人の権利利益の保護を前提としたデータの利活用を目指し、立派な方々にも、頭のおかしい人にも分け隔てなく物申して物議を醸してきた次第です。
次世代の扉を開く法的基盤整備の一助になればという思いが勝り、勢い余って、各方面に失礼と狼藉があったことは深く反省しております。大変申し訳ありませんでした。
PFC及びJILISをご注目いただくきっかけとなった事件をいくつか振り返れば、まず『Suica履歴データ無断提供事件』の問題提起がありました。これはその後の個情法平成27年と令和2年改正で「匿名加工情報」と「仮名加工情報」の導入につながりました。
次に、『個人情報保護法制2000個問題』解消の提言は、公民一元化を果たした令和3年個情報改正となり、自民党での『仮名加工医療情報』の提言はその後の二次利用法案の議論の先鞭をつけています。
それから、曽我部先生(JILIS副理事長)、宍戸先生(JILIS参与)他多くの研究者が加わってのJILISの活動では、漫画村問題に端を発した『超法規的ブロッキング問題』がありました。
まさに法治国家の危機を前に数百人の憲法、行政法、情報法、知財法研究者や弁護士や事業者有志が集まっての問題提起に発展し、政財官学をあげての大問題になりました。これはITの世界において、闘う法律家がかくも存在し一定の力となるということを実感する意味で大いに勇気づけられました。情報法制というニッチなエリアではありますが、権力の暴走なきように監視の目をもつ砦となって、今後も常にスタンバイの姿勢でいることが重要だろうと思います。その機能の一端をJILISが果たすことができればという思いです。
まさにモヒカン的な蛮族が、政界、法曹界や財界の主に法務部門に物申す的に頑張ってきたところ、近年、なぜか官公庁からのヒアリングに呼ばれ、法改正に臨む政治家の皆さんや、政党本部・政策調査会(政調)などからもお声をかけていただくようになりました。
さらには、遠巻きに我々を見ていた、財界、法務や研究開発部門、DX部門、業界ロビーイストの皆さんや、ITの問題はよくわからないという消費者保護団体、労働組合の方々からも相談されるようになり、法律事務所の弁護士さんや情報理工系の研究者、データサイエンティスト、医師、医学研究者などからも意見交換を求められるなど、必然的に政財官学民のコミュニケーションの場が形成されるようになりました。これもJILISの1つの機能としていければと思っています。
国際情勢が緊迫の度合いを増している時代を背景に、安全保障(諜報問題等)の問題も懸案事項にあがり、サイバー犯罪対策や、AI技術を操る巨大プラットフォーマーなどの私的なアクターの登場にどう統制を及ぼすべきかという『デジタル立憲主義』の議論もはじまっています。善隣外交と通商の重要性を基礎に、国際的ハーモナイゼーションの問題含めて多岐にわたる分野で「情報」を横軸に、「国民(個人、消費者、利用者、従業員、本人)」と内外の「企業」・「国家」との微妙な相克の問題に取り組みあるべきデジタル社会の法的基盤整備に取り組んでいかねばなりません。
JILISは、情報法制に関する立法政策に関する提言に力点を置いた学術研究団体として2016年に設立し、研究と提言のほか、公益団体として無料でシンポジウムやセミナーを開催し、JILISレポート等を広く無料で公開して参りました。昨今は、自治体向けの災害復興法の連続無料セミナーと、デジタル社会の消費者保護のリーダー養成の連続無料セミナーを企画しているところです。
こうした公益活動とは別に、上述した経緯から、デジタル社会における問題をテーマに、個人(民)と企業(産)と行政官(官)と研究者(学)と政治家(政)との連携を図りながら、各自の知的資源を相互に提供することによって、産官学民共に発展していくことを目的として「JILISコンサルティング」をJILISの内部組織として設置することに致しました。ここでの活動は、参加者の皆様に一定のコストを負担いただきながら有償サービスを基本に永続的に実施することを目指しています。また、ここでの収益は、JILISの学術研究等公益活動の運営予算に組み入れていければとも思っています。
まずは、学を中心に政財官民のより多くの人たちとの情報交換と議論とネットワーキングの場とすべく「コロキウム」(談話会)を立ち上げることにいたしました。みなさまのご参加とご協力を切にお願いする次第です。
2024年10月 一般財団法人情報法制研究所
※JILISコンサルティングの運営は、株式会社夜間飛行に委託しております。
JILIS(一般財団法人 情報法制研究所)
JILISとは、Japan Institute of Law and Information Systems の略で、正式には「一般財団法人 情報法制研究所」と言い、2016年に情報法制に関する研究と政策提言を目的として設立された研究組織です。学を中心として産学官民の連携を図りながら、日本の将来を見据えた合理的な政策提言を行う実践的な活動を行うことを目指しています。
なお、ここで「情報法制」とは、法学分野に限定することなく、情報工学、経済学、経営学、政治学、社会学、情報学、教育学といった多角的視点から「情報に関する政策論」も射程に入れた広い意味を込めて使っています。
JILIS公式ホームページ:https://www.jilis.org/index.html