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夜間飛行メルマガ
津田大介 
メディアの現場
テレビ、ラジオ、Twitter、ニコニコ生放送、Ustream……。マスメディアからソーシャルメディアまで、新旧両メディアで縦横無尽に活動するジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介が、日々の取材活動を通じて見えてきた「現実の問題点」や、激変する「メディアの現場」を多角的な視点でレポートします。津田大介が現在構想している「政策にフォーカスした新しい政治ネットメディア」の制作過程なども随時お伝えしていく予定です。

【プレタポルテおすすめ記事】
TPPで日本の著作権法はどう変わる?――保護期間延長、非親告罪化、匂いや音の特許まで
なぜ今、「データジャーナリズム」なのか?――オープンデータ時代におけるジャーナリズムの役割?


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津田大介の「メディアの現場」
2011.8.31(vol.0/創刊準備号)

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――「メディアの現場」創刊にあたって――


ども、津田大介です。

ここ1年ほど「津田くん、有料メルマガやればいいじゃん」って話をされること
が多くなりました。ソーシャルメディアが普及したことで、90年代後半から存
在した「有料メルマガ」というオールドなビジネスモデルが個人のマネタイズ
手段として新たに再定義され、多くのジャーナリストがこぞって有料メルマガ
ビジネスに参入している状況を受けてのことでしょう。

有料メルマガに興味がなかったわけではないですし、いくつかそういうお話も
いただいていたのですが、ただでさえ筆の遅い僕のことですから、「まぁ普通
に毎週メルマガ出すとかムリムリ」と思って放置しておりました。

最近は原稿書き以外の仕事が増え、マスメディアやニコニコ生放送などへの出
演がメインの仕事になってきました。そんな中、昨年末ぐらいからぼんやりと
考えていたのは、「政治――特に政策にフォーカスしたネットメディア作りた
いな」ということだったんですね。

とにかく新聞やテレビの政局報道がクソつまらない。細かい政策のアジェンダ
や、政策を実施した際のシミュレーションなど、もっとこっちが知りたい話を
報道してほしい。日本にそういうメディアがゼロとは言いませんが、少なくと
もネットにはなかなかないなぁと。

ポップカルチャーニュースサイトの「ナタリー」を作った時もそうだったんで
すけど、僕の場合「世の中にそういうメディアがないんだったら作るか!」的
な発想になるんですね。なので、実際に作るコンセプトとかを昨年末くらいか
らちょっとずつ考え始めたんです(原稿書きから現実逃避するためにという説
もありますが……)。

その時はまだ僕ものほほんとしてまして、「『Huffington Post』の日本版っぽ
いものプロデュースします。なんせあのメディアはAOLに200億円で買収された
んですよ!」的な適当なことを投資家に言えば、それなりに金も集まって面白
いことできるかな……くらいに思ってたわけですね。

で、本格的に作る準備始めようかなと思っていた矢先、東日本大震災が起きま
した。大震災が起きた直後の自分の感情の揺れ動きや、情報発信のスタンス、
ソーシャルメディアの可能性などについては、いろいろなメディアで書いたり
語ったりしているのでそちらをチェックしていただくとして、東北地方に何度
も取材に行って行政や現地の人の話を聞いている中で、「政治メディア作らな
きゃな」という思いが、改めて違う形で大きくなっていきました。

そんな矢先にJ-WAVEさんから「『JAM THE WORLD』の火曜日ナビゲーターをやら
ないか」という話をいただき、7月からナビゲーターに就任することになりまし
た。「ニュース番組」を毎週持つというのは自分の中でも相当貴重な経験で、
毎週ヒーヒー言いながらニュースと向き合ってます。

時事ニュースと日々向き合うようになって僕が感じたのは「ネットならではの
新しい方法論で、自分のコンセプトが100%生きる形のメディアを作りたい」と
いうことでした。

だとすれば、人からお金を出資してもらってメディアを作るのは厳しいなと。
「金は出すけど口は出さない」なんてスポンサーは、現実問題としてなかなか
いないですから。

実はこの間、芸能事務所的なところやマネージメントオフィスから「津田くん
マネージメントするよ」というお話もいただいていたんです。実際、目の前の
仕事に忙殺され、日々のスケジュール管理もままならなくなっている状況でし
たから。でもやっぱり自分は、自分の金で、好きなように、好きなタイミング
で、好きなことをやりたいなと。結局マネージャーも自前で雇って、自分で金
を稼ぎ、それを原資に新しいメディアを作るという方針……というか「覚悟」
を6月くらいに固めました。

とはいえ、メディア作るとなると、人雇って記事作ってという部分に大きなコ
ストがかかります。実際、ある程度毎月の運営費がそれなりの金額で入ってこ
ないと、メディアとして継続するのは厳しい。毎月固定の運営費を継続的に払
えるようにするには、固定の収入源を確保する必要がある。だとしたら、現時
点でそれを実現する方法は有料メルマガしかないな、と。

ということで、このメルマガは基本僕が新しく作る政治メディアの原資を稼ぐ
ための手段という位置づけになります。でも、それだけでは面白くないので、
その政治メディアを作っていく過程も随時レポートしていこうと思ってます。

幸いなことに僕はテレビやラジオ、雑誌といったマスメディアで仕事する機会
が多く、そのうえでニコニコ生放送やUstreamなど、新しいネットメディアでも
たくさん仕事をさせていただいています。そして何より僕にはツイッターとい
う強力な情報発信手段があります。新旧両メディアで縦横無尽に活動できてい
る今だからこそ、メディアの「現場」がどうなっているのか、「中の人」が今
何を考えてどのようなコンセプトで情報を伝えようとしているのか、僕の目線
から伝えることに意味があるのではないかと考えました。

さまざまな視点から解説されるニュースを読むことで読者がメディアの未来像
を描けるようになる――そんなメルマガが作れればいいなと思っております。

メディアを選択することは、自分たちが現在置かれている状況を冷静に見るう
えで、とても重要な作業です。情報が爆発的に増え、マスメディアや政府、行
政全般に対する信頼度が落ちている今だからこそ、メディアに序列を付けず、
多様な情報にアクセスし、自分なりの判断基準を持つことが求められているの
でしょう。このメルマガがそのための一助となれば幸いです。

たぶん僕のことなのでうっかり発行遅れたりすることもあるかと思いますが、
長い目で見ていただければありがたいです。

このメルマガも、やがて形になるであろう政治メディアも、読者の皆さんと一
緒に楽しく作っていければと思っております。


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《目次》

1.今週のニュースピックアップ
2.ネットメディアを作ろう
3.ソーシャルメディア・ジャーナリズムの現在
4.メディア/イベントプレイバック
5.今週の原発情報クリッピング
6.津田大介クロニクル
7.津田大介のデジタル日記
8.140字で答えるQ&A
9.メディア・イベント出演、掲載予定
10.MIAUからのお知らせ
11.ネオローグユニオン

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1.今週のニュースピックアップ

津田大介が今気になっているニュースを毎週1つピックアップし、解説します。
〔毎号配信〕


◆違法ダウンロードの刑事罰化で何が変わる?


――違法ダウンロードの刑事罰化ってなんですか?

現在、国会で違法な著作物のダウンロードに刑事罰を科すことが議員立法で決
められそうになっています。

そもそも「ダウンロード違法化」とは、ネットに上がっている違法な音楽や動
画のファイルをダウンロードした場合、その行為が違法になるというもの [*1] 。
2010年1月の著作権法改正で施行されました。

ただし、無辜のユーザーに被害を与えないため、法律的にはかなり制限がかけ
られているんです。違法になるのはユーザーがアップされている著作物を「違
法である」と知ってダウンロードした場合のみで、その対象も音楽と動画に限
られています。つまり、合法なのか違法なのかよく知らずにダウンロードした
場合はセーフという、ある意味ゆるい縛りなんですね。加えてこれには刑事罰
が付いていなかった。いわば未成年者の飲酒喫煙みたいなもので、実質的には
規範的なものでしかなかったと言えます。


――ダウンロードが違法化されてまだ1年半しか経っていませんが、なぜこうし
た動きが見られるようになったのでしょう。

ダウンロード違法化は実現したものの、その実効性が薄いことに音楽業界や映
画業界のような権利者団体は不満を持っていて、刑事罰を付けることを要望し
ていました。今回なぜ状況が動いたのかというと、権利者団体が政界にも大き
な影響力がある大物芸能人に対して「ネットではこんなに違法なダウンロード
が横行していて、われわれの業界は大変なんです」と訴えた結果、「それはひ
どい。協力するよ」という話になったんですよ。役所での議論を待っていたら
数年かかってしまうかもしれないので、手っ取り早く改正できる議員立法でやっ
てしまおうということで、その芸能人と一緒に議員会館を回って、民主党と自
民党両方にロビー活動しているわけですね。


――もし、これが通ってしまったらどうなるんでしょう?

違法ダウンロードに刑事罰がついたところでどれだけ逮捕者が出せるのかとい
う問題はあります。「情を知って(違法であることを知って)」ということを
立証するのはなかなか難しいし、ハードディスクの中身に違法ファイルがあっ
たとしても、それがネットから違法にダウンロードしたものなのかもわからな
い。とはいえ、法律が改正されたら逮捕者は出てくるでしょうね。京都府警は
もう既に考えてるんじゃないかな。


――それはなぜですか。

警察では新規事例での逮捕が手柄の一つになるからですね。この種のサイバー
犯罪系ではとにかく京都府警が強くて、何かと新しい著作権侵害でユーザーを
逮捕しています。どういう形になるのかわからないですが、議員立法が通った
らそこから1~2年以内に見せしめ的な逮捕者を出すんじゃないかと思います。

音楽業界、映画業界としても法律を変えても違法なファイルがネットからなく
ならないし、ユーザーがカジュアルに違法コピーしているという現状がある。
そこに対して「やっぱり違法なダウンロードはダメなんだよ」というのを逮捕
者を出すことによって示せる。


――刑事罰化に効果はありますかね。

結局、海賊版対策としては、悪質なデッドコピーや違法なユーザーの厳しい取
り締まりと同時に、安価で豊富なカタログを利便性が高い形で提供していく必
要があるんです。「合法なものはこっちにありますよ、だから違法なものは取
り締まります」というのがないと、みんなほしいものが手に入らないからイリ
ーガルなものに手を伸ばすという、良くないスパイラルに陥ってしまう。徹底
したデッドコピー対策と消費者の方を向いたコンテンツ提供を両輪でやらない
とダメなんですよね。

AppleがiTunes Music Storeを2003年に始めた時、「われわれは違法ダウンロー
ドと闘っているんだ、違法ダウンローダーはリーガルに安く音楽ファイルを手
に入れる手段がないからやっているわけで、それをリーガルに安く提供すれば
減るでしょ」というロジックでレコード会社を説得したんですよ。

日本にもiTunes Storeはあるけれども、そういうニーズを充分に汲み取った配
信になっているとは言いがたい。安価で豊富なカタログ提供を一緒にやったう
えでこういう法律改正をするのならともかく、そういうことは十分にはやって
ない。陰でこそこそロビー活動して法律を変えるのではなく、慎重に議論する
必要があると思います。

個人的に懸念しているのはこの刑事罰化をきっかけとする適用範囲の拡大です。
今は「違法ダウンロード」の対象が音楽と動画に限定されているけれども、す
べての著作物を対象にしましょう、刑事罰をつけましょうという方向に拡大し
ていったら、極端な話、新聞社のサイトから文章をコピペしたブログを印刷す
るだけでもアウト、刑事罰で捕まりかねないという状況になる。

現在著作権法は侵害された側が被害を申し出た時に初めて成立する「親告罪」
の形を取っていますが、これが被害を受けた側が申し出なくても罪が成立する
「非親告罪」になった場合、著作権法を「運用」することで警察は相当広範囲
な逮捕ができるようになるわけですね。

実際に著作権法の「非親告罪化」は著作権法を所管する文化庁の政策審議会で
も音楽業界や映画業界が要望を出しており、こうした主張が受け入れられれば、
その方向性で著作権法が整備されていってしまうわけです。権利者団体側は数
年がかりで計画的に要望を出していますから、すぐに変わらなくてもいいんで
すよね。そうしてじわじわ法律が改正されていくんです。

でも、適用範囲が拡大されていくと、どこかのタイミングでネットを使ってい
る国民のほとんどが犯罪人になってしまうという状況がもたらされる。それに
対して何らかのリミッターがあるべきだと僕は思うし、危険な法律改正の流れ
だと思いますね。


――国会の審議状況を教えてください。

ひとまず内閣総辞職になったので、今国会で採決されることはなくなりました。
あるとすればこれから開かれる臨時国会か、来年の通常国会でしょうね。時間
ができたのは朗報です。民主党であれば川内博史議員、自民党であれば山本一
太議員や世耕弘成議員などが違法ダウンロードの刑事罰化に反対しています。
まずはこの問題を両党の違いを引き出す案件にできるかどうかがポイントでし
ょうね。


[*1]「ダウンロード違法化」ほぼ決定 その背景と問題点
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0810/24/news085.html

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2.ネットメディアを作ろう

「政策にフォーカスした政治のネットメディア」とはどのようなものなのか。
また、それを一から立ち上げ、マネタイズしていくまでの長い道のりを、リア
ルタイムにレポートしていきます。〔隔週、第1・第3水曜配信〕

※連載開始は創刊号からを予定しております。

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3.ソーシャルメディア・ジャーナリズムの現在

ツイッターやFacebook、YouTube、ニコニコ動画など、ソーシャルメディアの台
頭によって、ジャーナリズムのあり方が大きく様変わりしています。この連載
では、その最新事例の紹介から、今後のジャーナリズムが担うべき役割などを
連載形式でお伝えします。〔隔週、第2・第4水曜配信〕

※連載開始はvol.2からを予定しております。

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4.メディア/イベントプレイバック

僕が出演した番組やトークイベントなどで、内容が面白かったものをテキスト
で読みやすく再編集してお届けします。原発・放射線の問題や政治全般、著作
権、音楽の話までテーマは多岐にわたる予定です。〔毎号配信〕

vol.0のゲストは、早稲田大学社会科学総合学術院教授の久塚純一さんです。


◆「子ども手当」とは何だったのか
(8月9日 J-WAVE『JAM THE WORLD』「15MINUTES」より)

出演:久塚純一(早稲田大学社会科学総合学術院教授)、高橋杏美(『JAM THE
WORLD』リポーター)、津田大介

高橋:8月4日、民主・自民・公明の3党は15歳以下の子ども一人あたりに対して
毎月1万3000円が支給されている子ども手当を廃止して、政権交代前にあった児
童手当を復活させる方向で合意しました。

津田:子ども手当というのは、これで民主党が政権をとったと言っても過言で
はないくらい目玉の政策でしたよね。それが財政が厳しくなったから止めると
いうのはあまりにも場当たり的対応だということで非難されても仕方がない。
とはいえ、僕たちも実際のところ、子ども手当の意義や効果について、いまい
ちわかっていない部分も多いわけです。そこで今回は専門家の方にお話を伺っ
て学んでいきたいと思います。

高橋:今夜は子育て支援の問題に詳しい早稲田大学社会科学総合学術院教授・
久塚純一さんをお招きして、子育て支援のあるべきかたちについて考えたいと
思います。久塚先生、よろしくお願いします。

久塚:はい。本当に懐かしい方が目の前にいてね。津田さんなんですね。

津田:僕、大学が早稲田の社会科学部で、久塚さんは僕の恩師なんですよ。先
生のゼミ生でした。

高橋:学生時代の津田さんはどんな感じだったのかを教えていただけますか?

久塚:津田さんは本当にまじめというか、人と話すのがあんまり得意じゃなか
ったですよね。相手の方の顔だとか目を見て話すのが苦手で、いつも下を向い
て一人で考えているような学生でしたね(笑)。

津田:いやぁ……。その頃はまだ髪の毛も金髪じゃなかったですしね。そんな
人と話すのが苦手だった人間が今こうしてラジオパーソナリティーをやってる
わけですから、人生わからないものですね……(笑)。さて、今回は「子ども
手当」がテーマなんですが、そもそも子ども手当っていろいろ報道されるわり
には、もともとどういう制度なのか、良いところと悪いところはどこなのかが
わかりづらいと思うんです。

久塚:「子ども手当」の前には、「児童手当」という制度があったんです。こ
の制度には、これまでにも変化がたくさんあったんですね。1971年の児童手当
創設当時は(実施は1972年)、義務教育修了前まで手当を支給するという形で
した。それが1985年には義務教育就学の前、91年には3歳未満までというふうに
ずっと下がってきたんですね。近年、少子高齢化の問題などが出てきたことで
2006年には小学校修了前まで拡大された。児童手当自体がフニャフニャになっ
てきた歴史を抱えているシロモノなんです。

高橋:今回また対象年齢が変わって、12歳から15歳に引き上げられたというこ
とですね。

津田:来年度からの児童手当では「960万円」という所得制限が設定されるんで
すが、これについて久塚さんはどうお考えですか?

久塚:所得制限を設けるのは大きな変化ですね。今回の3党合意についてポイン
トは4つあります。まず、考え方の基本にあるものが見えなくなってしまったの
ではないか。これが一つ目の大きなポイントだと思うんですね。つまり、当初
は質的な議論をしていたはずなのに、どこかで量的な議論に変わってしまった
んです。

津田:いつの間にか議論がすり替わってしまったと……。そもそも、民主党の
子ども手当の基本にあった考え方はどういうものなんでしょうか?

久塚:民主党が子ども手当をマニフェストに掲げて実現しようとしたのは「所
得制限をなくそう」ということだったんです。かつての児童手当にあった所得
制限をなくした形で、子ども手当を実現しようとした。子育てというのは主に
“家庭”でするんだけれども、“主体としての子どもが育っていくこと”に光
を当てようと考えたんですね。つまり、児童というものを世帯の所得との関係
で見るのではなくて、児童個人をベースに制度を作ろうとしたわけです。

高橋:その理念、子ども個人に焦点を当てるというのが新しかった?

久塚:と言えると思いますね。

津田:ある意味、欧米型の一つの福祉概念が輸入されてきたと。

久塚:ええ。極端に言えば、フランスの「パックス」というのがありますけれ
ども、男性と男性、女性と女性が一つのカップルになって、そこで養子縁組を
して育てるというようなことも念頭に置くかどうかまで、話は広がっていくわ
けですね。

高橋:当初、子ども手当は「全額国が負担するんだ」というふうにしていたわ
けなんですけど、政権交代から2年の間に、財源の体系も変わってきているんで
すよね?

久塚:はい。これが二つ目のポイントなんですけれども、「控除から手当へ」
というのが民主党の基本的な流れだったんです。所得税をかける時に、扶養控
除、年少扶養控除というのがありますね。子育てをしていたら大変だから、税
金をちょっと少なく控除しましょうというのがかつての制度だったんです。民
主党はその “控除”をなくして、新しい“手当”を作ろうとした。

ここでまったく新しい制度になったのであればいろいろな考え方ができたし、
オプションもあったわけです。ところが「どうもお金が足らない」ということ
になって、当時の長妻厚生労働大臣が「昔の児童手当をベースに考えるのであ
れば、全額国の負担でなくてもいい」ということに一部了承したものだから、
本来はセットだったはずの「控除と手当」が分断されるような形で今日に
至っているんです。

津田:複雑ですね。

久塚:控除と手当が分断される形で今日に至ったことで、先行きが不透明なも
のが結論として出てきたということが三つ目のポイントです。たとえ支払いが
苦しくても、理屈が通っていたらお金を出そうかなと自分を納得させますよね?
 そうして一度納得させたはずだったものが、「あれは違うんだよ」みたいな
話になったので、「私たちは何を信じてきたの?」ということになってしまっ
た。さらにその結果として、一定の所得のラインを引いたことで分断が生じて
しまった。

津田:ねじれ国会になってしまったがゆえに、こういう法案がどんどん政治的
な取引に使われているということも一つポイントになっていると思うんです。
その背景には誰にでもわかりやすいように噛み砕いて報じてしまうメディアの
問題もあると思うのですが、その点はいかがですか?

久塚:メディアの責任というのもあるんでしょうけど、それ以前にメディアが
使いたくなるような理念というのが打ち出せていないというのが現状です。

津田:なるほど……。理念という意味では、民主党が政権交代の前にマニフェ
ストとして子ども手当を打ち出した時、久塚さんはどう評価されました?

久塚:両手を挙げて賛成というよりは、これがどうなっていくのかなというこ
とが心配になったわけです。津田さんもご存じのように、私は基本的な考え方
として、「ある政策というのは、こうでなければならない」ということをあま
り強く持ってないんですね。国民を納得させるための理屈をどうつけるのかが
明確であり、骨太であることが重要なんです。

津田:民主党の理念は当初から時を経ることでどんどん骨抜きになっていった
と思うんですけど、逆に今回の合意で自民党と公明党の理念というのは見えて
きているんでしょうか?

久塚:子どもというものを、生活しているご家庭の所得によって左右される存
在だと見なす点では、旧来の児童手当とあまり変わりがなくて。ただ給付の年
齢を上げたり、金額を上げたり――いわば量的な拡大のところで勝ちとったの
が今回の合意だと思うんですね。

津田:まさに政争の具にされているということなんでしょうね。

高橋:最後に、久塚さんが考える子育て支援政策のあるべき姿について教えて
ください。

久塚:非常に難しいんですけれども、確実に言えるのは、誰でも子どもの時は
あったということなんですね。今回のような大震災であるとか、そこまでいか
なくても親とか家庭とかいうことで、いつ何が生じるか分からない――子ども
というのはそういう存在なんですね。前年度の所得がどうだということにあま
り振り回されずに、今そこにいる目の前の子どものことをどう考えるんだとい
うことをベースにすることがまず大事だと思います。

高橋:久塚さん、お忙しい中ありがとうございました。

津田:いやー、ためになる授業でした。ありがとうございます、先生。


▼久塚純一(ひさつか・じゅんいち)
1948年北海道生まれ。同志社大学法学部卒業後、九州大学大学院法学研究科博
士課程中退。北九州大学法学部助教授などを経て、現在、早稲田大学社会科学
総合学術院教授。主な著書に『フランス社会保障医療形成史』(九州大学出版
会)、『比較福祉の方法』(成文堂)など。

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5.今週の原発情報クリッピング〔2011/08/22~08/28〕

ここ1週間で話題になった原発・放射線に関するニュースの中から、特に注目す
べき、読んでおきたいニュースを、アシスタントの小嶋裕一(@mutevox)が紹
介します(※ニュースのリンクはリンク先の都合によりリンク切れになってい
ることがあります)。〔毎号配信〕


◆10m以上の津波想定 直前に報告
(NHKニュース/8月24日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110825/k10015146911000.html

「福島第一原発を10m以上の津波が襲う可能性がある」という2008年の東京電力
の試算が国に報告されたのは、3.11の4日前だったという話。浜岡原発の津波対
策で、防波壁を2、3年ほどかけて設置する予定となっていることからもわかる
ように、3年という時間があれば、津波対策は十分可能であることがわかる。東
京電力はこれまでの会見の中で、土木学会の指針に基づいて津波対策を行って
きたと回答してきた(福島第一原発の場合は5.7m)。ちなみに、2008年の試算
を出したのもこの土木学会。土木学会の原子力土木委員会には、東京電力をは
じめ、各電力会社が名を連ねている
(http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/list_23)。


◆東芝・日立など OBが“自社”原発検査 10年で36人 保安院に再就職
(東京新聞/8月26日)
http://bit.ly/q8vO3a

東芝・日立・三菱という原発メーカーや電力会社の関連会社出身者が原子力保
安検査官として中途採用されていたという話。出身企業の納入先原発の検査を
行う例もあり、納入が採用のきっかけになった可能性を指摘する声も。


◆福島に中間貯蔵施設、知事は反発 帰宅まで20年超の地域も
(東京新聞/8月27日)
http://bit.ly/ogxfUI

菅元首相は8月27日、福島第一原発の事故で放射能に汚染された汚泥やがれきを
貯蔵する中間貯蔵施設を作りたいとの意向を示した。原発周辺は、今回と同程
度の事故であるチェルノブイリを例にすれば、数十年に渡って立ち入り禁止と
なる汚染レベル。除染を進めるには、こうした貯蔵施設が必要となる。

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6.津田大介クロニクル

僕が過去に書いた原稿の中から、今読み返してみると面白そうなものを選んで
掲載します。雑誌ライター時代のものから、ジャーナリスト活動初期の原稿ま
で、書かれた時代背景を思い出しながらお楽しみいただければ幸いです。


◆音楽業界に新たなムーブメント DTMソフトが新しい音楽を生み出す
(初出:『MacPeople』2008年2月号「津田大介の音楽配信一刀両断 第31回」)

07年最後の連載ということもあり、今回は今年の日本の音楽配信ネタを総括し
ようと思ったのだが、いざ「日本」という枠組みで音楽配信周りのことを考え
ると途端にネタが出てこない。というのも、日本の音楽配信の現状は「PC向け
はどこも沈滞。着うたフルは絶好調。以上!」で終わってしまうからだ。

海の向こうではiTunes StoreやAmazonといった大手業者からレディオヘッドの
ような大物アーティストまで、ノンDRMの音楽配信を開始したり、自分が所有す
る楽曲をオンライン上にアップロードすることでどこでも自分がその楽曲を聴
けるほか、他人がその楽曲をネットラジオ形式で聴けるlala.comのような面白
いサービスが出てきている。かたや日本は、自分で購入したCDを自分の携帯電
話で聴けるように変換してくれるオンラインストレージサービス「MYUTA」が、
著作権侵害であるという判決を下されサービスを停止してしまう有様 [*1][*2]。
MYUTAはあくまで自分専用のサービスであり、アップした楽曲を他人が聴くこ
とはできなかった。日本の場合、米国のように一定の要件を満たしていれば明
確にサービス事業者が守られるDMCA(デジタルミレニアム著作権法)や、フェ
アユース(公正使用)が存在しないということが大きく、著作権的にちょっと
でもグレーに踏み込むサービスは片っ端から「出る杭」として訴訟を起こされ
てしまう。フェアユースとは、著作権法を硬直的に適用することが著作権法の
目的を否定してしまう場合に著作権を制限する理論のことだ。米国流の自由な
経済原則を重視するやり方は、もちろん良い面も悪い面もあるのだが、ことIT
ネットサービスの発展という観点で考えれば、著作権に一定の「バッファ」を
設けておくことが非常に大きな意味を持っている。だが、日本にはそういうバ
ッファは存在せず、「基本的に著作権はガチガチに守るもの」という原則です
べてが動いている。このような環境下でレコード会社主導の着うたフルしか盛
り上がらないのは、ある意味当然の話なのだ。

そんな停滞する日本の音楽業界で、個人的に注目しているムーブメントがある。
それは「初音ミク」だ。各方面で話題になっているのですでにご存じの方も多
いだろう。簡単に解説すると、パソコン上で女性の声を人工的に合成して「歌
わせる」ことができるDTM(デスクトップミュージック)ソフトだ。通常DTM用
ソフトというのは非常に市場規模が小さく、3000本売れれば「ヒット商品」と
言われる。ところが、8月31日にクリプトン・フューチャー・メディア(株)か
ら発売されたこのソフトは、発売直後からネットを中心に大ブームを巻き起こ
し、DTM用ソフトとしては異例の2万本を売り上げた。

もともと、音声合成技術を使ってパソコンで歌声を再現するというものは古く
から存在したテクノロジーだ。この分野は、近年ヤマハ(株)の独壇場になっ
ており、初音ミクの音声合成エンジンもヤマハの「VOCALOID 2」を採用してい
る。しかし、初音ミクが違ったのは採用した「声」とそれに伴うキャラクター
の設定だ。従来のVOCALOIDは本格派のシンガーをベースの音声にするものが多
かったのだが、初音ミクはベースの音声をあえて若手声優の藤田咲にして、か
わいらしい声で歌う「未来のアイドル」というコンセプトで開発を行った。さ
らにイメージキャラクターとしてバーチャルアイドルのアニメ系キャラクター
を設定し、アニメ音楽やゲーム音楽などのファン層に訴求する戦略を取った。
そこが従来のVOCALOID技術を使ったソフトと明確に異なる点であり、ブレイク
した最大のポイントがここにあると言っても過言ではないだろう。

初音ミクがユーザーに浸透するきっかけを作ったのは、間違いなく国産の動画
投稿サービス「ニコニコ動画」だ。ソフトの発売後間もない9月4日にニコニコ
動画に「初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」という動画が投稿され、
話題を集めた。もともとFlashアニメーションとしてネットで広く話題を集めて
いたフィンランドのポルカミュージックを初音ミクに歌わせたことで大人気を
博し、初音ミクは発売後1週間で店頭から在庫が消えるヒット商品となった。

発売後数週間は、ニコニコ動画を中心に何か有名な曲を初音ミクで歌わせてみ
る、というコンセプトのカバー曲が中心だったが、9月20日に投稿されたオリジ
ナル楽曲「みくみくにしてあげる♪」[*3] がスマッシュヒット。わずか8日間
で50万回以上再生(現在は約250万回再生)されるという快挙を成し遂げた。同
曲は完全にニコニコ動画ユーザーたちの「アンセム」となり、初音ミクは完全
ニコニコ動画発のムーブメントとして認知された。

ここからの流れがとにかく速かった。以後急速に、カバーだけでなくオリジナ
ル曲の投稿も増え、楽曲のクオリティーや初音ミクの使いこなしも日増しに上
がってきた。使いこなしとは、デフォルトの設定のまま歌わせると機械っぽい
声にしかならないものを、細かいパラメーターによってうまく設定すること。
ニコニコ動画内ではこうした初音ミクを使いこなす技を「調教」と呼んでいる。
現在では、明らかにセミプロかプロが作ったと思われるクオリティーの楽曲が
オリジナル楽曲として投稿されているから驚きだ。

また、同時に初音ミクを「ネタ」にしたさまざまなコラボレーションやメディ
アミックスも盛んに行われていった。イメージキャラクターをアニメーション
させたり、3DCGで作成した動画がニコニコ動画に投稿されたり、イラストレー
ターが描いたミクの絵と、オリジナル楽曲を組み合わせてプロモーションムー
ビーを作るものが出てくるなど、ニコニコ動画という場で人々がよってたかっ
てひとつのネタでコンテンツを作る姿はまさに「UGC」(User Generated
Contents)、「CGM」(Consumer Generated Media)の理想型とも言えるので
はないか。

11月に入ると、ネット上の現象が現実世界にも影響を及ぼし始める。11月上旬
に「みくみくにしてあげる♪」が通信カラオケのJOYSOUNDに入ることが決定。
下旬には来年3月に発売されるフィギュアに予約が殺到。受注開始から、わずか
1日半で1万体予約されたことが明らかにされた。まさに、ネットならではの速
度感で初音ミクという存在が急速に浸透したのである。

音楽配信という観点で個人的に注目しているのは、初音ミクのブログパーツだ。
これはユーザーがニコニコ動画にアップされているオリジナル楽曲をブログ上
で連続再生できるツール。現在有名な楽曲だけでも100曲以上のオリジナル楽曲
が公開されており、それらを自分の好きなようにBGMとして聴ける。このブログ
パーツで初音ミクのオリジナル楽曲を連続再生するのがとにかく面白いのだ。
それぞれの楽曲のクオリティーや音質、そもそも楽曲のジャンルなど曲によっ
て大きく違うのだが、同じ初音ミクという「素材」をどのように料理するのか
ということが、本当に人によって解釈がさまざまで興味深い。大げさに言えば
ここに「クリエイティビティの源泉」らしきものを感じた。

はっきり言えば、初音ミク最大のヒット曲「みくみくにしてあげる♪」は、音
質や構成面からみれば、楽曲としてそれほどクオリティーが高いわけではない。
しかし、あの「みっくみくにしてあげる」というサビの歌詞と、メロディーの
キャッチーさ。これが発売後1カ月もしないでユーザーから自発的に出てきたと
いうことに大きな感慨を感じずにはいられないのだ。

冷静に見れば、初音ミクはあくまでひとつの「楽器」でしかない。今後は初音
ミクだけでなく、さまざまな声優やボーカリストが起用されたVOCALOIDソフト
が発売され、この楽器も一般化していくのだろう。しかし、シンセサイザーの
登場が電子音楽やテクノを生み出したように、ターンテーブルのスクラッチや
サンプラーの登場がヒップホップを生み出したように、強力な個性を放つ「楽
器」は新たな音楽ジャンルを生み出す力を持っているのだ。初音ミクがそれだ
けの力を持っているかどうかはまだ未知数だが、間違いなく停滞する日本の音
楽シーンにまったく新しいインパクトをもたらしたことは疑いようがない。

しかし、絶望的になるのはメジャーのレコード会社社員はこうした初音ミクの
ムーブメントを「素」で知らない人が多いということだ。こんな刺激的なムー
ブメントが出てきているのに「しょせんオタクが騒いでいるだけでしょ?」な
んて斜に構えている人もたくさんいる。

そんな状況だ。要するに、もはやアーティストから見切りを付けられる寸前の
レコード会社に新しいムーブメントは起こせない、ということだ。それなら初
音ミクをきっかけにして、ユーザー側から新しいムーブメントを起こしてしま
えばいい。音楽業界方面からイヤな話しか聞こえてこない今だからこそ、彼ら
が抱えるさまざまな問題を初音ミクを使ってユーザーが打ち破ることができた
ら、そんな痛快なことはないではないか。

[*1] 音楽ストレージサービス「MYUTA」に著作権侵害の判決 -JASRAC「音楽転
送でもサービス提供者に責任」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070528/jasrac.htm

[*2] いまさらMYUTA事件について考えてみる
http://d.hatena.ne.jp/slayer845/20081017/1224239125

[*3] 【初音ミク】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1097445

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《コメント》
相変わらずレコード会社に対して辛辣ですね。でも僕は、「初音ミクはすごい
ことになるんじゃないか」というワクワク感を持ってたし、この頃会ってたレ
コード会社のお偉いさんたちが初音ミクをバカにしているのを聞いて、新しい
ものを評価できない感性ってかっこ悪い……と思っていたのです。この頃と比
べると音楽業界を取り巻く環境は大きく変わりましたが、レコード会社の意識
や根本的な体質はあまり変わってないですね。たぶんこれからも変わることが
ないんだろうなとも思います。

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7.津田大介のデジタル日記〔2011/8/24~08/31〕

ツイッターでは書ききれない、いろいろな日常の記録をこちらに書いていきま
す。〔毎号配信〕


■8/24(水)■

 ●午後3時から平河町でラジオデイズの収録。ゲストは大友良英さん。

 ●初めてちゃんと話した大友さんは、とても面白かった。今までの俺のラジオ
デイズの中でも出色の回だったんじゃないかと思う。

 ●ラジオって楽しい!

 ●終了後中野に移動してOil in Life。今回のゲストは奥村大さん。話してい
るフィーリングがとても良くて、ついつい長話をしてしまった。


■8/25(木)■

 ●アカデミーヒルズでいろいろ仕事。

 ●18時からヒルズカフェで某マスメディアの人の新規開発コンテンツに対し
てアドバイス。

 ●19時から六本木中国飯店でP社の人と食事会。


■8/26(金)■

 ●昼から事務所でAngel Peaceの渡辺さんと対談Ust。

 ●思った以上に話は盛り上がり、良い感じの対談ができた。グラウンドワー
ク三島の活動も今度いろいろ調べてみたいと思った。

 ●武蔵大学に移動して前期の給料を受け取る。安い。ベタで学部の非常勤講
師とかホントやるもんじゃないと心に誓った。

 ●渋谷に移動してユニバーサルミュージック小池社長と対談企画。小池さん
とサシでじっくり話をするのは実は初めてだったので、楽しかった。後半はか
なり濃い話に。

 ●同じく渋谷で「わせだのわ」という早稲田の交流会イベントが開かれてい
たので顔を出す。こちらはこちらで濃い時間だった。

 ●何やらかんやらで朝帰り。


■8/27(土)■

 ●昼に六本木のメルセデス・ベンツ東京本社に。ベンツエコサミットで司会
業務。

 ●思った以上に長いサミットだったけど、これはこれでかなり有意義な議論
になった。正直なところ、震災前まで環境問題的なものにはほとんど興味がな
かったけど、自分の今後の活動を考えるうえで、こっち方面のアンテナも高く
しておかないといけない、とも思った。

 ●吉祥寺に移動して「わ」で飲み会。本来は3月12日に予定されていた飲み会
のリベンジ。初めてお目にかかる@kowagariは、やっぱり初めて会ったような気
がしなかった。年内にもう一度飲みましょうと約束して別れる。


■8/28(日)■

 ●朝早く起きてメルマガの集中作業をするつもりが寝坊。

 ●午後になって麹町に移動してニコ生「音楽著作権の将来をJASRACと考える
~向谷倶楽部の新しい試み~」で司会。

 ●番組終了後グランドアーク半蔵門で軽く打ち上げ。打ち上げの席でビッグ
プロジェクトが決まり、動き始めた。具体化したら超すごいことになりそう。

 ●高円寺に戻り、メルマガ作業を継続。


■8/29(月)■

 ●昼前に汐留で某マスメディア系の人とランチ。担々麺がうまかった。

 ●アカデミーヒルズに向かい、某ネットメディアから取材を受ける。

 ●取材とは別なところで頭を抱えるような事実を聞かされ切なくなったり。

 ●浜町に向かい、まぐまぐの写真撮影。

 ●ドワンゴに向かい、「ネットの羅針盤」で司会。今までの羅針盤の中でも
相当面白い放送になったと思う。

 ●人形町で打ち上げして帰宅。


■8/30(火)■

 ●昼からアカデミーヒルズで某雑誌の仕事。@nobiとソーシャルメディアの現
在について対談した。

 ●その後六本木ニコファーレに移動。ニコ生番組「田原総一朗のジャーナリ
スト魂 in ニコファーレ」の司会。

 ●初のニコファーレで楽しい体験ができ、番組後半は良いナビゲートができ
たと思う。次回があるなら、次はもう少し丁々発止の議論ができるようなファ
シリテートがしたい。

 ●J-WAVEに移動してJAM THE WORLD。15MINUTESは水の話。オフトークでかな
り面白い話が聞けた。

 ●終了後事務所に戻り、朝までメルマガ作業……のつもりが途中睡魔に負け
る。年は取りたくないものですね。

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8.140字で答えるQ&A

読者の方からのあらゆる質問に、できるだけ140字以内で答えていきます。質問
は 140qa@neo-logue.com までどうぞ。ただし、すべての質問に回答できるとは
限りませんので、あらかじめご了承ください。なお、質問受付は毎週日曜締め
とさせていただきます。


■Q1 津田さんが購読しているメルマガは?

高城剛メルマガです。超面白いですよ。津田大介メルマガとの併読をおすすめ
します。


■Q2 津田さんが今もっとも注目している人を教えてください。

「NEWSWEEK日本版」編集主幹の竹田圭吾さん(@KeigoTakeda)がダントツです
ね。物の見方やツイートのセンスにシビれます。今一番面白いツイッタラーだ
と思います。


■Q3 使っているツイッタークライアントは何ですか?

iPhoneでは、使いやすくて手になじむので「SimplyTweet」を。PCでは、基本的
にはブラウザで見てて、「PBTweet+」というブラウザ拡張機能を使ってます。


■Q4 今一番出てみたいテレビ番組は?

紅白歌合戦で審査員をやりたいです。


■Q5 今高校の先生になるなら、どの教科担当がいい?

社会です。


■Q6 「AERAの黒歴史」って何ですか?

「AERA 津田大介 黒歴史」でググってください。


■Q7 結婚してるって本当ですか?ショックです!

2002年に結婚して、今年で9年目です。ワセジョです。


■Q8 かつてテクノポップ御三家と言われたP-MODEL、ヒカシュー、プラスチッ
クスは聴きますか?

P-MODELとヒカシューは大好きです。P-MODELのCDは全部、ヒカシューもほとん
ど持ってます。ヒカシューの「夏」というアルバムは、何度聴いたかわからな
いくらい聴きました。


■Q9 原稿書きに使っているエディタは?

Space Editorですね。このメルマガ原稿もこれで書いてます。97年くらいから
使ってます。当時はNIFTY SERVEに専用の会議室があって、作者にいろいろ要望
が出せたんですね。このエディタには僕の要望がめちゃめちゃ入ってるから、
超使いやすいんですよ、津田大介的に。でも最近はバージョンアップもまった
くしてなくて、さすがにWindows7環境ではきつくなってきたので新しいエディ
タを探している最中です。


■Q10 津田さんが一番好きなジャニタレは?

SMAPの中居くんですね。昔は大嫌いだったんだけど、日テレでやってる「黒バ
ラ」という番組を観て、一気に好きになりました。

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9.メディア・イベント出演、掲載予定〔2011/09/1~09/7〕

この先1週間のメディア・イベント出演、掲載予定です。


===レギュラー出演===

【Radio】
■J-WAVE「JAM THE WORLD」
放送:毎週火曜日 20:00~22:00
URL:http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/
Ustream:http://www.ustream.tv/channel/jwave813fm


===寄稿===
■思想地図β vol.2(合同会社コンテクチュアズ)
ルポルタージュ
ソーシャルメディアは東北を再生可能か─ローカルコミュニティの自立と復興
9月1日発売

[Amazonで購入]
→http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4990524314/xtcbz-22

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10.MIAUからのお知らせ

僕が代表理事を務めるインターネットユーザー協会(MIAU)から、最新情報を
お伝えします。


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このコーナーではMIAUの活動の報告をメインに、インターネットにまつわる著
作権や情報通信政策などの話題についてクリッピングしていきます。

さて今日の話題はこちら。

▼動画ダウンロード支援サイト「TUBEFIRE」運営会社に対して
侵害行為の差止めなどを求める訴訟提起(日本レコード協会)
http://www.riaj.or.jp/release/2011/pr110823.html

「TUBEFIRE」はYouTube上にある動画から、その音声のデータのみをmp3形式で
ダウンロードできるというサービスでした。同様のサービスとしてはYouTube
向けだと「MP3TUBE」、ニコニコ動画向けだと「にこさうんど」や「nicomimi」
があります。本メルマガのニュース解説コーナーで津田が解説している違法ダ
ウンロードの刑罰化は、「情を知って(ファイルが違法なコンテンツであると
いうことを知って)」ファイルをダウンロードしたユーザーを有罪にして実刑
を与えようというものですが、この訴訟はあくまでもサービスを提供している
事業者を訴えたものです。

レコード協会の主張はこうです。TUBEFIREは「TUBEFIREのサーバで」YouTubeの
映像から音楽データを抜き出す処理を行い、 TUBEFIREのサーバ上に処理済みの
音楽データを置き、それをユーザーにダウンロードさせていて、その行為は著
作権法上で定められている公衆送信権(送信可能化権)や複製権を侵害してい
るというものです。データがTUBEFIREのサーバ上にあるのが問題だとしていま
す。

一方、TUBEFIRE側はこれまで、映像データ含めコンテンツはユーザーのPCにあ
り、あくまでもTUBEFIREは、ユーザーのPC内のデータを処理するプログラム
(Java Applet)をオンラインで提供しているだけだとしていました。

現在の著作権法ではストリーミングを視聴する際のキャッシュファイルの取得
については、ダウンロードの対象外とされています。なのでTUBEFIRE側の説明
どおりにサービスが実装されていれば、レコード協会の訴えは非常に難しいこ
とになります。

YouTubeそのものや海外のサービスを訴えることは非常に難しいので、今回は足
のつかみやすい国内企業を訴えたものだと思いますが、上述のとおり類似サー
ビスや同様の機能を持つソフトウェアは国内国外問わず存在しますし、ブラウ
ザのプラグインにすら同様の機能を持つものが数多くあります。トカゲの尻尾
切りのように細々とした事象を潰すのではなく、YouTubeから音楽をダウンロー
ドせずとも音楽を聴ける、豊富なカタログを揃えたサブスクリプションサービ
ス(たとえば「Spotify」のような)の登場が待たれていると強く感じます。そ
ういう意味ではNapster Japanのサービスが短命だったことは非常に残念です。

この件についての具体的なMIAUの動きは今のところありませんが、MIAUはそも
そもダウンロード違法化に反対するところから生まれた団体です。今後も本件
の動きを注視していく所存です。

-----参考:MIAU ダウンロード違法化反対の動き----

▼私的録音録画小委員会の第15回会合に関する緊急メッセージ
(MIAU公式サイト)
http://miau.jp/1198033200.phtml

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11.ネオローグユニオン

僕のマネージャー香月啓佑(@kskktk)とアシスタントの小嶋裕一(@mutevox)
によるオフトークです。


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香月:……ということでお送りしてきましたメルマガ創刊準備号、いかがでし
たでしょうか?

小嶋:この対談、編集後記的なポジションなんだけど、実はどのコーナーより
も先に原稿が上がってるという、本末転倒な感じがいいよね。

香月:それを言っちゃあおしまいだよ! 少なくともこれが読まれてるってこ
とは、メルマガが無事出せたってことなんだから。

小嶋:まぁ発行がいつであれ、津田さんの原稿が間に合ったってことだしね。

香月:「ゴースト使ってんじゃないか」って相当煽られる気がするけどね。

小嶋:中を読んでもらえれば、その心配は無用だって分かると思うけど。まぁ
津田さんが原稿落としたとしても、このメルマガは質問コーナーとかあるし、
読者の皆さんと作るもんだと思っているので、多い日も安心。

香月:さすがにそれはダメだよ! 何言ってんだよ! でもQ&Aコーナーの質問
はマジで募集してるし、面白い質問があるとメルマガが盛り上がるので、どし
どし送ってほしいところです。

小嶋:そうね。今回は創刊準備号ということで質問を募集できなかったから、
ツイッターとかUstreamで僕らが個人的に「津田大介に訊きたいこと」を集めて
みたんだよね。

香月:そうそう。で、その中に僕らが気になってる質問もあって。

小嶋:「津田大介の鞄の中には何が入っているのか」。

香月:これ僕らも謎です。ノートPCが出てくるところしか見たことないよね。
なのにいつもパンパンで、かつずっしり重いの。

小嶋:あれ、マジで何が入ってんだろうね。

香月:というわけで今度「JAM THE WORLD」の放送中にでも中をのぞいて、メル
マガ読者限定でお伝えしようと思います。

小嶋:さすがにそれはヤバイだろw でも入社した途端にマネージャー解任と
か面白いし、ぜひやってください。

香月:……。まぁ、そういうインセンティブでもないとメルマガ購読を続けて
くれる人がいないってことで、企画の一例として挙げたまでです。あくまでも
例だからね!

小嶋:結局おまえ、どこまでもチキンだな。だから虚言癖が……。

香月:(無視して)というわけで、こんな感じで楽しくメルマガやっていきま
す。読者の皆さんからのご意見もどんどん取り入れていきます。僕らの生活費
のためにも、ぜひよろしくお願いします!

小嶋:目指せ! ホリエモンのメルマガ超え!

香月:……現実見ろよ!!!

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□ 発行責任者:津田大介(@tsuda)
□ 編集:松本香織(@tekitoeditor)
□ スタッフ:小嶋裕一(@mutevox)、香月啓佑(@kskktk)

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年末年始には、適宜、合併号を発行します。
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[著者プロフィール] ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。