総選挙の争点には何をおくべきか
みなさんは、次の総選挙においては、何を「争点」とすべきだと思いますか。原発についての態度でしょうか。TPPを受け入れるかどうかでしょうか。憲法を改正すべきかどうかでしょうか。近隣諸国との付き合い方でしょうか。あるいは、経済的格差に対する考え方でしょうか。
もし、誰も思いついていないような意外な争点がありましたら、それを教えてくださっても結構です。さあ、議論しましょう。
争点は「日本をどう開国するか」である。
先日、ある集まりで、選挙の話になりました。そこである人が、「福井県は、嶺南と嶺北で、文化が違うから定員が削減されても、議員は2人いりますね。」といわれたので、私は「そんなもん一人でいいですよ」と言ったところ、「あんたは坊さんのくせに地元のことはどうでもいいんか、先祖さんに申し訳ないと思わんのか?!」と強い剣幕で詰め寄られてしまいました。そこで私は「あんたは、地元さえ良ければ、日本はどうなってもかまわんのか?!」と言い返してしまいました。ご想像の通り、後は平行線で言い合いがしばらく続きましたが、しばらくしてから横から助け舟がでて、「これは何処まで言っても、平行線のままやで」ということばで、私は「福井県のことは県会議員が考えればいい、国会議員は日本全体のことを考えなあかん」と、吐き捨てるようにいって、終わりにしました。
私は、今回の選挙が、またぞろ、「福井県の発展の為には原子力がいる」だの「新幹線の若狭回りを実現する」だのといった、地元への利益誘導が争点になってしまわないかと恐れています。そして、これまでは、地方の多くの選挙民は、候補者が持つ、利益誘導の実力を見極めて投票行動をしてきたのが実際のところだと思います。それは争点というよりは、その議員が持つポジションへの信任といったもので、あの候補者は建設省に顔が利くだの、大蔵省上がりだということに重点が置かれていたと思います。ここにおいては、国全体の青写真を考えることは、全くと言っていいほど票にならないので、時間の無駄であり、それらのことは、党や組織に完全に丸投げの状態だったということではないでしょうか? しかしながら、いったん地元に不利益となることが考えられるTPPへの参加問題等になると、俄然、絶対反対の主張を掲げるといった具合に、あくまで地元の利益一辺倒の国会議員が多数を占める結果となってしまっていたのだと思います。
振り返ってみると、「小泉郵政選挙」までは、この、地元の利益一辺倒の公約を掲げて選挙に臨むのが、国会議員選挙では、あたりまえだったのではないでしょうか。国会議員は、国より県の利益、県会議員は県より市町村の利益、市会議員は市より自分の区の利益、最終的には、何よりも第一に自分の利益、といった具合に人々の利己的心情は、どんどん内向きに作用します。これが、かって、ケネディ大統領が国民に向かって投げかけた、
Ask not what your country can do for you-ask what you can do for your country
という言葉が問いかける、克服すべき心情なのではないでしょうか。この心情を転換して、市会議員は市全体のことを考える。県会議員は県全体のことを考える・・・・とくれば、国会議員は、当然国全体のことを考える。当たり前のことですが、日本人は、長く島国根性の中で、日本が世界のすべてだと思って、内向きの政治を続けてきてしまいました。そして、日本国政府は、国会議員の中から選ばれるのですから、その政府が、泥臭い地方政治の利権集団に足を引っ張られたまま、世界全体のことを考えて日本の政治を行うということなどということは、どう考えても不可能なように思います。だから、今回は、どうしても「国会議員は国全体のことを考える。」ということを徹底していただきたいと思うのです。つまり、今回の選挙では、隠れた争点であれなんであれ、地方や団体への利益誘導は、話題にもしてほしくありません。今の状況からいって、そんなことをするのは、ゆすり、たかりの類いに属するものだと思っていただきたい。今回からは、純粋に、これからの日本の進むべき道を争点にしていただきたい。そして、その青写真を持たないものは、潔く身を引いていただきたい。国会議員であれば、アメリカの上下両院議員のように、誰が首相になっても、この国を引っ張っていける。それだけの見識と覚悟を持って、ご自身の政策をご自身の言葉で語っていただきたいと思います。
それでは、具体的に争点は何かというと「日本の開国」ということになると思います。これは、単に、TPPに賛成か反対かにとどまらず、日本をどうやったら国際社会の中で、当たり前の国になり、一人前にその責任を果たせるような国にするかということです。これは、TPP参加によって実現することが出来るかもしれないし、FTAを多国間で結んで得られることかもしれないが、とにかく、このグローバル化の波を利用して、完全に錆び付いてしまった官僚支配の政治経済社会システムを一新することが最も重要なことだと思います。
そして、この、政治経済社会システムを変えるという意味では、より、規制緩和、非関税貿易障壁にまで踏み込んで議論しなくてはならないであろうTPP参加の方が、多くの痛みを伴うでしょうけれども、望ましい方向となるのではないでしょうか。少なくとも、私が以前より主張し続けている表面的に利他的建前を続けていけば、そのうち、にっちもさっちも動けない状態に陥ると思われるので、儒教的上下関係の価値観を捨て去って、自由主義的、実力主義的な経済システムが実現すると期待されます。それに応じて、社会システムや政治システムは、真の民主主義を確立して人々の幸福を追求できるシステムとして、その役割を果たしていけるように常に進化させていかなければならないと思います。
しかしながら、簡単にTPPに参加といっても、今の政治家や、官僚に世界を相手に、国際交渉をやれると期待するのは、残念ながら無理な相談だと思います。今まで通り、アメリカの一方的な要求の前で、国内事情を限りなく説明して、結局仲間に入れてもらえないという事態に陥るのではないかと危惧します。
そこで、私は、日本の国益を託すにたる人物、小泉純一郎氏をTPP全権大使として今度出来る政府がどうなるにせよ任命していただきたいと思います。それに補佐としては、孫正義氏、原丈二氏、新浪剛史氏、柳井正氏 が適任ではないだろうかと思います。
この人選は、私の直感ではありますが、しがらみのない目で見るとこうなるので、多くの日本の将来に希望を見いだしたい人達の意見とも一致するのではないでしょうか。
TPPへの参加交渉は、単に貿易問題を交渉するだけではなくて、それによって、世界における、日本の位置、枠組みが問われるようになると思います。それは、単に規制緩和や、非関税貿易障壁の撤廃にとどまらず、教育問題や司法の問題、時には憲法の問題にまで解決すべき難問が及ぶかもしれません。しかし、戦後のどさくさの中で、GHQ監視の基で作られた、急場のシステムとは違い、同じ外圧でも、我々が主体的に、又、我々自身の民主主義を進化させながら、じっくりと議論を重ねて新しい枠組みを作り上げることができると期待されます。そういった意味で、TPP交渉団は、その都度交渉の妨げとなる日本の国内問題を取り上げ、今度選出される人々が構成する国会に問題を投げかけ、その国会では、国民を巻き込みながら個人の知恵を出し合って問題解決にあたっていってほしいと思います。恐らく、交渉の進展に従って、多くの解決すべき難問がでてくると予想されますが、国内制度の整備等、ある程度のめどが立つまでは、参加が他の国より遅れることが許されるのであれば、まず、国内問題の解決に全力を注ぐべきだと思います。
そういった意味では、次の新しい国会では、審議と決定のスピード化が要求されると思います。審議を尽くすという意味では、今のような代表質問形式は、無駄が多く、論点も定まりません。これは、スカイプ等の会議システムを利用して、誰でも発言し、議長が議論の場をコントロールするといったような、何か、オープンで議論のしやすい工夫を考えてほしいものです。これがうまくやれれば、党より議員個人の意見が反映され、政策ごとに、一人一人の意見が解るようになり、党の縛りによる反対の為の反対という議会空転の要素が大幅に少なくなることでしょう。それに、議論が出来ない議員は、次の選挙で必ず落ちることになるでしょう。それから、ツイッター等で匿名の無責任発言を排除して、議論を深める方法も、是非とも整備して欲しいものの一つです。現在では、SNSのおかげで、匿名の無責任発言を除くことさへ出来れば、工夫すれば、いくらでも、民主主義的手続きで意見を集約することが出来るし、その上にたって、民主主義的決定もスピーディーにできるようになると思います。そういえば、この問題こそ真っ先にやらなければならない問題ではないでしょうか?
結論として、今回の選挙では地元の利益を優先するような争点は完全に排除すること。TPP 参加をバネにして、日本の政治経済社会問題を解決し、日本が国際社会の一員として責任ある地位につくことを目指す。
合掌