暮らしの中に生きる「魔法」―伝統魔女のすべて
「ルーマニアには古い伝統を引き継ぐ魔女が生きている」そんな話はかなり前から聞いていました。
『魔女の宅急便』の著者、角野栄子さんは現地に取材されていますし、ある著名な宗教学者の方もルーマニアで魔女に出会ったという話をされていました。ネットメディアで、ルーマニアの「魔女」に課税されるようになった、というニュースを目にしたことも。
ルーマニアは魔女大国なのです。魔女や魔法に長年かかわっている身としては大変興味あるところ。とはいえ何分にも遠い国の話。言葉の壁もあって、興味はあってもその実態を知るのは難しいだろうと考えていたのです。
ですが!灯台下暗しとはこのこと。なんと日本在住のルーマニア人で、先祖に魔女を持ち、魔法の伝統を引き継いでおられる方がいたのです。しかも、日本人の言語学者の方と親しい間柄とのこと。かの地の魔法を知る絶好の条件が整っているではありませんか。
今回のセミナーは、「魔女」をキーワードに東欧に生きる魔法の伝統についてお話を伺います。日常の中の魔法の実践法を楽しみ、ひいてはルーマニアという国の文化そのものに親しむまたとない機会です。
奇しくも11月29日はルーマニアの魔女たちにとって大切な祝日であり、また、死霊が行き交う日でもある「ストリゴイの夜」。魔法が満ちる宵に今もなお存在する魔女の世界について考えを巡らせてみませんか。
鏡リュウジ
日時
11月29日(金)19:00〜20:45
(12/17まで視聴可能なアーカイブ動画つき)
講座概要
ルーマニアは東ヨーロッパにあるラテン民族の国ですが、時に「魔女大国」と呼ばれることがあります。
この国は西欧で失われたような古い伝統文化を今も残しており、伝統工芸や祭りと同じように村々では厳しい農村生活をよりよく過ごすための知識や技術が代々女性たちによって受け継がれてきました。
この知識や技術、呪文、そしてこれらの担い手は実際のところどのような存在なのか、そして「魔女大国」の外からは見えないカラクリについて、ルーマニア在住歴約20年の日本人、そして日本在住歴約20年のルーマニア人の二人が理論と実践の両側面から皆さんに紹介していきます。
角悠介
ルーマニアの魔術や伝統文化のご紹介
★ストリゴイの夜
11月30日はキリスト教聖アンデレの祝日です。しかし、東欧ルーマニアにおいてこの日の前夜は「ストリゴイの夜」または「狼の夜」と呼ばれています。ストリゴイとはルーマニアの死霊・生霊を指し、この夜はストリゴイの活動が一年で最も活発になる危険な時間とされています。古来より人々はストリゴイから身を護るために、様々な手段を講じてきたそうです。
★護符
エリーザさんの出身地である、ルーマニアドゥンボヴィツァ県の「丹毒封じの護符」。紙に描いて蜂蜜を裏に塗り、胡椒と少量のパプリカパウダーをかけて患部に貼ります。
*詳しい内容は講座当日にご紹介!
登壇者
講師:角悠介
東京都出身。言語学博士。ルーマニア国⽴バベシュ・ボヨイ⼤学日本⽂化センター所⻑/神⼾市外国語⼤学客員研究員/北マケドニア共和国聖キリル・メトディウス⼤学ロマニ語講師/国際ロマ連盟日本代表・評議員(言語・⽂化)/アテネ・フランセ講師(ラテン語)/東京外国語⼤学オープンアカデミー講師。ルーマニアで学士号と博士号、ハンガリーで修士号を取得。在外公館と連携し日本・ルーマニアの友好関係の発展に努める傍ら、東欧を中⼼にロマ民族(=ジプシー)の言語「ロマニ語」のフィールドワークを⾏う。ロマ民族への貢献により欧州議会、国際ロマ連盟、ロマ⽂化団体から表彰・感謝状を受ける。著書:『ロマニ・コード 謎の民族「ロマ」をめぐる冒険』(夜間⾶⾏)など。
講師:山田エリーザ
ルーマニアの古都トゥルゴヴィシュテ市出身。武蔵野市ルーマニア友好市民の会副理事⻑・ルーマニア語講師。公益財団法人武蔵野市国際交流協会(MIA)評議委員。在日ルーマニア⼤使館と連携しルーマニアと日本の友好関係の発展に⻑年貢献する。定期的に⼤学や高校、国際イベントにおいてルーマニア⽂化紹介を⾏う他、使節団の通訳、翻訳等、幅広く活動する。ルーマニアの古き良き伝統⽂化が今も残るブコヴィナ地方の村で曾祖母が伝えていた古の知恵と技術を幼少期に傍らで見て学び、研鑽を重ね、それを日本に移住した現在も生活の中で日々実践する。
司会・聞き手:鏡リュウジ
占星術研究家・翻訳家。国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了(比較文化)。占星術の心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新。占星術の歴史にも造形が深い。英国占星術協会会員。日本トランスパーソナル学会理事。平安女学院大学客員教授。京都文教大学客員教授。
著書に『鏡リュウジの占星術の教科書『Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・IV・V』『占星術の文化誌』(以上、原書房)、訳書にマギー・ハイド著『ユングと占星術』(青土社)、ジェイムス・ヒルマン著『魂のコード』(朝日新聞出版)、ニコラス・キャンピオン著『世界史と西洋占星術』(柏書房)、リス・グリーン著『占星学』(青土社)『占星術とユング心理学』(原書房)、グレアム・トービン著『占星医術とハーブ学の世界』(原書房)等多数。責任編集をつとめたユリイカ増刊号『タロットの世界』(青土社)は学術的アプローチが話題となる。