徹底研究!ウエイト=スミス版タロットの世界
20世紀初頭、英国で刊行された一組のカードがその後のタロット、占い、そしてアートに巨大な影響を与えることになりました。そう、ウエイト=スミス版タロットです。
著名なオカルト主義者アーサー・ウエイトの下、パメラ・コールマン・スミスという画家が描いた、78枚総絵札のタロットは、やがて世界で最もポピュラーなタロットとなり、タロット占いを占星術や手相と並ぶ人気の占いコンテンツの地位に押し上げました。
この版がなければ、今、私たちがこのようにタロットを楽しんでいることもなかったかもしれません。しかし、ウエイト=スミス版タロットや、この名作を取り巻く状況そのものについて、私たちは未だあまり多くを知らないのではないでしょうか。
今回の特別セミナーでは、このタロットの実像とその影響について様々な角度から迫ってまいります。
講師は考えられる限り最高の方々。世界でも稀な、最初期のウエイト=スミス版タロット4種を全て所有されている夢然堂氏のコレクション、世界的な黄金の夜明け団、近代魔術研究者の江口之隆氏、そして女性史の立場からパメラを研究される角谷由美子氏、占術はもちろん20世紀のカウンターカルチャーにも造詣の深い伊泉龍一氏にご登壇いただきます。また賢龍氏と私、鏡は日本におけるウエイト=スミス版タロットの受容とその展開についてお話しする予定。
日本タロット史に残るであろうこのイベント、お見逃しなく!
鏡リュウジ
日時
9月14日(土)13:00〜19:00
(途中休憩あり、アーカイブあり)
タイムスケジュール
- 13:00〜13:30
オープニングトーク:超稀少!4種類のウェイト=スミス・タロット特別公開
夢然堂×鏡リュウジ - 13:30〜14:45
パメラ・コールマン・スミスの作品と時代
講師:江口之隆 - 〜休憩15分〜
- 15:00〜16:15
ピクシーに翼:パメラ・コールマン・スミス研究の可能性と展望
講師:角谷由美子 - 16:15〜17:30
アーサー・E・ウェイトの二つのタロットと生命の木:「ウェイト=スミス・タロット」と「フェロー・オブ・ザ・ロージー・クロスのタロット」を比較する
講師:伊泉龍一 - 〜休憩15分〜
- 17:45〜19:00
アフタートーク:日本におけるウエイト=スミス版の受容と展開
賢龍雅人×鏡リュウジ - 各講座1時間+質疑応答15分 総合司会:鏡リュウジ
講座概要
夢然堂氏のウエイト=スミス版タロットのオリジナル(パメラAからD)までの貴重なコレクションを鑑賞しながらのガイダンス。
☆夢然堂
古典タロット愛好家。『ユリイカ タロットの世界』(青土社)では「『マルセイユのタロット』史 概説」と「日本におけるタロットの受容史」を、『アルケミスト双書 タロットの美術史』シリーズ(創元社)では「マルセイユ版タロットの世界」を担当。その他、国内外の協力作品や企画多々。第4回国際タロット賞選考委員。
ウエイト=スミス版を実際に作画したパメラ・コールマン・スミス。パメラを最も有名にしたのは、もちろん、この名作タロットですが、彼女の仕事はタロットだけにはとどまりません。このレクチャーでは、パメラが作品を提供した希少な手彩色本や雑誌「グリーンシーフ」、さらに挿絵本、さらには伝説的オカルト雑誌「オカルトレヴュー」その他を手にとりながら、そこからわかること、推測できることなど、いろいろ語りたく思います。また雑誌広告から見るRWSタロット(ウエイト=スミス版)の印象なども交えつつ、この名版誕生の時代の空気に迫っていくことにしましょう。(鏡)
講師:江口之隆
魔術研究家、翻訳家。主な著書に『黄金の夜明け』(亀井勝行との共著、国書刊行会)、『西洋魔物図鑑』(翔泳社)など、訳書にリガルディー編『黄金の夜明け魔術全書』、クロウリー『新装版777の書』(国書刊行会)、シセロ夫妻『[黄金の夜明け団]入門』、イェンセン『ウェイト=スミス・タロット物語』(いずれもヒカルランド)などがある。『ユリイカ タロットの世界』(青土社)では「ライダー・ウェイト・スミス・タロット登場の背景」を担当。フォロワー数11万人超のTwitterアカウント「西洋魔術博物館」を主宰。魅惑的な西洋魔術の世界に関するウィットに富んだ情報発信で幅広い層の人気を呼んでいる。
「世界で最も売れたタロット」と称されるウエイト=スミス版タロットの作画者パメラ・コールマン・スミス。このデッキの成功はパメラの独創性や才能が大きく寄与していたはずですが、彼女の業績は長らくこのデッキの監修者ウエイトの陰に隠され注目を集めていませんでした。パメラの貢献に人々が目を向け始めたのはおそらく90年代。それまで「ウエイト版」あるいは最初の版元の名前をとって「ライダー版」と呼ばれていたこのタロットは、現在では「ウエイト=スミス版」と称されるのが一般的となっています。しかし、パメラの業績は単にタロットあるいはオカルト領域にとどまるものではありません。様々な雑誌や童話への挿画、あるいは婦人参政権を求める運動へのポスター画にみるフェミニズムへの貢献、さらには日本画との影響関係や、私が特に注目している、イサム・ノグチの父との思いがけない交流など、彼女の活動と業績にはまだまだ見るべきものがあるのです。今回のレクチャーではアメリカ人英文学者のオコナー(Elizabeth Foley O’Connor)らの先行研究を視野に入れつつ、パメラのさらなる魅力の再発見と、これからの学術的研究の展望の一端をご紹介したいと思います。コーンウォールの妖精ピクシーの愛称で呼ばれたパメラには、未だ私たちの目に映っていない翼の羽ばたきがあったようです。この短いトークでその翼の息吹を感じていただけたら幸いです。
講師:角谷由美子
神戸国際大学経済学部・国際文化ビジネス観光学科、准教授。2015年、神戸女学院大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。英文学ではD.H.ロレンスをはじめとするモダニズム文学の研究に始まり、現在ではタロット画家であるパメラ・コールマン・スミスの研究に着手。2022年に論文、「パメラ・コールマン・スミスとヨネ・ノグチ ― 国際詩人ノグチにとっての The Green Sheaf 誌の意義 ―」、2023年に英語論文、「Exploring Narrative Therapy : Arthur Ransome’s Old Peter’s Russian Tales and Pamela Colman Smith’s Annancy Stories」を発表。他、関連書籍の書評や国内外の学会において、コールマンに関する研究発表を行っている。
「ウェイト=スミス・タロット」と「フェロー・オブ・ザ・ロージー・クロスのタロット」を比較する
「ウェイト版」ないし「ライダー版」と呼ばれて親しまれている今もなお世界でもっとも有名なタロット「ウェイト=スミス・タロット」を出版したアーサー・E・ウェイトは、後年に自身の神秘主義的結社「フェロー・オブ・ザ・ロージー・クロス」のために別のタロットも作っています。とりわけ注目すべきは、いずれのタロットもカバラの生命の木との対応を基にして、同一の作者によって作られているのにもかかわらず、その対応関係が大きく異なっているという点です。今回は、生命の木の中のいくつかの「パス」に照らし合わせながら、前者のタロットだけでなく、知られざる後者のタロットの方にも光を当ててみたいと思います。
講師:伊泉龍一
占い・精神世界研究家。タロット・カード、ヌメロロジー(数秘術)、占星術、手相術、ルーンなどを始めとして欧米の多数の占いを紹介している。著書に『タロット大全 歴史から図像まで』(紀伊國屋書店)、『完全マスタータロット占術大全』(説話社)、60'sカウンターカルチャー(駒草出版)、訳書にバニング著『ラーニング・ザ・タロット』(駒草出版)、レイチェル・ポラック著『タロットの書』(フォーテュナ)、ケヴィン・バーク著『占星術完全ガイド』等。『ユリイカ タロットの世界』(青土社)では「水瓶座時代のタロットとポップオカルティズム」、「タロットに流れるエネルギーの系譜」( 鏡リュウジと伊泉龍一による対談)、「映画における「愚者」(エミリー・オーガー著、伊泉龍一訳)を担当。
ウエイト=スミス版タロットはもちろん、日本のタロットシーンにも大きな影響を与えています。日本でウエイト=スミス版タロットが知られるようになったのはいつ頃のことでしょうか。そしてそれはどんなふうに広がっていったのでしょうか?実はおそらく最初の日本製タロットはウエイト=スミス版タロットのクローンだと思われます。また、影響力のあるタロティストたちがユニークなウエイト=スミス版依拠のタロットを制作してきた歴史があります。日本でのウエイト=スミス版タロットの受容を、様々なデッキや著作を通して振り返りながら、ウエイト=スミス版タロットを使った実際のリーディング例もデモンストレーションします。