呪術と魔法と占いと 運命をよむ技?運命をかえる技?
今年も東京アストロロジースクールの「サマースクール」の時期がやってきました。
今回のテーマは「呪術、魔法」つまりMAGICです。このところ、すっかり古典になった『ハリーポッター』シリーズはもちろん、『呪術廻戦』『葬送のフリーレン』、また最近公開された映画『陰陽師0』など、呪術、魔法はいまや創作作品には欠かせない要素となっています。
しかし、呪術や魔法は単なるフィクションではなく、歴史を通じて「リアル」な存在でもありました。そう、「占い」が信じる信じないを超えて生きている伝統であるのと同様に。またフィクションとして描かれた魔術師や呪術師は、今度は現実世界の呪術や魔法の実践の着想源にもなっていくループを形成していきます。
さらに、呪術と占いは、古来、不可分の関係にありながら、一方では対照的な性格を持っているように見えます。占いが与えられた運命を「読む」技法であるとすれば、与えられた運命や未来を強引なまでに変えていく技法が「呪術」である、というふうに理解できるかもしれません。
しかし、占いのアドバイスで未来を拓くことができると考えればそれは一種の呪術ではないでしょうか。この二者の関係は、自由意志と運命の複雑な問題へと僕たちを連れ戻すことにもなります。
今回のサマースクールでは、第一人者の方をお招きし、古代ギリシャから中世・近世ヨーロッパ、そして日本の呪術世界を一望し、呪術と占いの世界をのぞいてみようと思います。夏のひと時、MAGICの妖しい魅惑の世界を学び、楽しみましょう。
鏡リュウジ
日時
8月24日(土)13:00〜19:00
(途中休憩あり、アーカイブあり)
タイムスケジュール
- 13:00〜14:15
オープニングトーク:秘密の古代ギリシャ
藤村シシン×鏡リュウジ - 14:15〜15:30
呪術と陰陽師
講師:田中貴子 - 〜休憩15分〜
- 15:45〜17:00
『占い』と『呪い』のあいだ
講師:石井ゆかり - 17:00〜18:15
魔導書グリモワールの世界
講師:辻元よしふみ・辻元玲子 - 18:15〜19:00
運命をよむ技? 運命をかえる技?
賢龍雅人×鏡リュウジ - 各講座1時間+質疑応答15分 総合司会:鏡リュウジ
講座概要
日本では古代から中世に至るまで陰陽師が占いや天文、暦の作成に大きな役割を果たしましたが、彼らはドラマに描かれるような呪術師とはずいぶん異なり、公務員でもあり科学者ともいえる存在でした。今回は、そういった陰陽師の性格を中心に、安倍晴明がなぜ超人的な呪術師のように描かれるになったかを、歴史と文学資料によって探ります。また、和歌の世界に見える珍しいまじない歌についてもわかりやすく解説します。
講師:田中貴子
京都府生まれ。広島大学大学院文学研究科修了.博士(日本文学).京都精華大学助教授などを経て、甲南大学文学部教授。専門は中世国文学、仏教説話。著書に『中世幻妖――近代人が憧れた時代』(幻戯書房)、『安倍晴明の一千年』(法蔵館文庫)、『いちにち、古典――〈とき〉をめぐる日本文学誌』(岩波書店)など。
数年前『呪われたナターシャ: 現代ロシアにおける呪術の民族誌』という本に触れ、興味を持ちました。私の住む京都には有名な「縁切り寺」があり、呪術は遠い過去のものとはいえません。不道徳、非科学的なものに社会の光はどんどん当たりにくくなり、「ないもの」とされがちですが、「無視」に危険はないでしょうか。私はこの分野を研究してきたわけではありませんが、星占いという「呪い」にほど近いポジションから、このテーマについて考えてみたいと思います。
講師:石井ゆかり
ライター。著書『12星座シリーズ』(WAVE出版)が120万部のベストセラーとなる。他に『星栞2022年の星占い』(幻冬舎コミックス)、『後ろ歩きにすすむ旅』(イースト・プレス)、『子どもの自分に会う魔法 大人になってから読む児童文学』(白泉社)『選んだ理由。』(ミシマ社)など多数。
魔術を扱う小説やゲーム、漫画、アニメでおなじみの「魔導書(グリモワール)」。「エロイムエッサイム」の呪文や「ソロモン王の鍵」で知られる魔法円、護符は長い間、歴史を超えて人々の心を妖しくとらえてきました。一方で、西洋のキリスト教文化の下では、異端の嫌疑をかけられてきたこともあり、従来の文化史では周縁的な位置づけに甘んじてきた面もありました。しかし、「魔導書」は天文学や宗教の知識を基盤に創り上げられた、ある意味で「リベラルアーツ」の産物でもあり、また、作者や出所が妖しい「偽書」としての性質をもつ両義性、そして広い層への影響力という点からも魔導書は近年、学術的な研究対象としても注目を集めているのです。O・デイヴィス博士は、グリモワール研究の第一人者であり、氏による啓蒙書『ビジュアル図鑑 魔導書の歴史』は邦訳も出版され話題になっています。この講座では、本書の訳者二人が、ディヴィスの研究を下敷きにわかりやすく魔導書の歴史を振り返ります(鏡)
講師:辻元よしふみ
講師:辻元よしふみ 服飾史・軍事史研究家。翻訳家。陸上自衛隊需品学校部外講師。早稲田大学卒。陸上自衛隊の新型制服の改正に関わり陸上幕僚長感謝状を受けた。著書に『軍装・服飾史カラー図鑑 増補版』『図説 戦争と軍服の歴史』など。監修・翻訳書にエドワーズ『写真でたどる 麗しの紳士服図鑑』など。翻訳書にデイヴィス『ビジュアル図鑑魔導書の歴史』マクドノー『第三帝国全史 ヒトラー』(上下巻)など。
講師:辻元玲子
歴史考証復元画家(ヒストリカル・イラストレーター)。翻訳家。陸上自衛隊需品学校部外講師。1972年横浜市生まれ。桐朋学園大学音楽学部演奏学科卒。ドイツ国立ミュンヘン音楽・演劇大学特別課程修了。日本で数少ないユニフォーモロジー(制服学)と歴史復元画の専門画家。辻元よしふみと共に陸上幕僚長感謝状を受けた。よしふみとの共著、共訳書は上記。監訳書にレフコヴィチ『私はアウシュヴィッツと5つの収容所を生きのびナチス・ハンターとなった』がある。